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世界野獣食い紀行(第1巻)

世界野獣食い紀行(第1巻) 表紙イメージ

[著者] 風樹茂

これまで生きてきて、どこで何を食べた?
おいしかった?
記憶に残った食べ物はある……?
私は職業柄、海外の顧客をデパ地下やスーパーの食料品売場によく連れていく。
すげーぇ、とみな一様に感嘆の声をあげる。
綺麗なのだ。
肉も野菜も果物も同じ規格で、同じ色の食品が並んでいる。不揃いのものはない。私はむしろ疑念にかられる。
何かが足りない。日本中にあるファ−ストフードやスローフード、グルメ食、これぞうまいという食材。
どれもこれも何か柔い。生命力を感じない。
だからこそ食品売場でさえ、強烈な食物の匂いが漂ってこない。そしてそれらを食しても味が薄い
。記憶に残る味がない。本来、食とは野蛮なものである。
命を殺すことで人は生きる。
腹が減っているから、その場で手に入る食材を、鼠でも猫でもアルマジロでもピラニアでも、焼いたり煮たり、あるいは生で、あふあふと食う。
それも、孤食ではなく、みんなで。食は人と人を結びつける。
食は家族や友人やひいては民族の固有の記憶と分かち難く結びついている。
だからこそ逆に、食は時に嫌悪や誤解を招く。例えばエクアドルではナマケモノを食べる。
ある欧米人が「かわいいナマケモノを食べないで、保護を!」と主張していたが、むしろ私は彼らといっしょにかのものを食べてみたい。もしかしたら、ある家庭では、アルゼンチンに出稼ぎに行くおとーさんを囲んで最後の一家団欒を、涙を流しながらナマケモノ鍋をつついて過ごしたのかもしれない。
かの国にはナマケモノの神話だってあるに違いない。いや、いや、もう理屈はやめよう。
作家を気取ってかっこうをつけても、メッキはすぐに剥げる。
私は、うまいものを食べたい、珍味が欲しい。納豆、漬物、焼き魚、ハンバーガー、カレー、ただの焼肉、そんなものでは、私の舌はごまかされない。
食いしん坊なのだ!
もっと、もっと世界中の珍味を食いたい!
今はお金も時も乏しく、珍味が食べられない。
だから、せめて記憶を辿ってみることにする。これまで私は留学生、旅人、企業の駐在者、援助・投資の海外コンサルタントなど様々な身分で世界を渡り歩いてきた。
そのときどきの街路や熱帯雨林で誰かと食した食物の匂い・味が記憶の中枢で長年発酵し続け、滾り、是非言葉にして欲しいと私をせっついてくる。
食に纏わる恐怖、驚き、哀しさ、笑い、歓びが。
あぁ、笑ってくれ、この馬鹿話!

価格:100円(+税)