[著者] 風樹茂

あなたの恋人や夫は大丈夫だろうか？
　オフィスでのイジメが原因で死の危機に直面しているのでは？
　日本労働弁護団によると、職場でのイジメに関する相談件数は2倍（2004年は相談全体の8％、2005年は17．7％）に増加しているという。だが男は妻や恋人にイジメにあっているなどと、決して口にしないものだ。素振りにさえ出さない。
その上、景気が回復し始めているというのに、給与は下がりつづける。所得が上がるのは、社長や一部の幹部社員だけなのだ。
すると今度はローン破綻の危機が待ち構えている。本書の主人公吉井伸一（36歳）は保険担当の郵便局員。
民営化をひかえて、厳しいノルマが課せられている。
が、営業成績はふるわない。おまけに、不慣れな郵便配達も仕事に加わる。時に誤配をする。毎朝局長から、「バカ」「おまえに居場所はない」「営業ができない奴は人間じゃない」「局のガン！」「赤字君！」と罵声を浴びる。
歩合がつかない分、給与も下がりつづける。
ピーク時に比べ年収は半減。だが郊外に建てた家のローンは待ってくれない。
バイクを売る、車を売る、生命保険を解約する。
生活の破綻は迫ってくる。35歳を越えていて転職もままならない。そのうち、妻に嘘をつかざるを得なくなる。
夫婦間に不信が芽生える。どうすればいいのか？
相談しようにも相手もいない。
妻は二人の子育てで手がいっぱい。
地方に引っ越したため回りに、友人も親戚も親もいない。職場の同僚は信じられない。伸一は孤独に悩み続け、しだいに死に魅せられて行く。
友は唯一インターネットの自殺関連の掲示板。
似通った境遇の人間が自分の他にもいると知るだけでも、少しはほっとできるのだ。
実際、役に立つことさえある。
リンクを辿って、命の電話に辿りついた伸一は、妻子が不在のときに、相談してみた。
すると、年配の女性相談員に「家族みんなで重荷を背負えば、一人一人の重荷が軽くなるわよ。
是非、奥さんに打ち分けたら」と勧められる。
伸一は何日か躊躇し続けたが、ある日、勇気を奮い起こして事実を妻に話す。
すると、妻は…さあ、事実を知ったときあなたならどうする。夫や恋人を変えるのは女だ。

定価：330円（本体300円＋税10%）